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    一番はしの家はよそから流れて来た浄瑠璃語りの家である。宵のうちはその障子に人影が写り「デデンデン」という三味線の撥音と下手な嗚咽の歌が聞こえて来る。

    「うん、あの程度だと別に影響はないんだらう」

    「化物が出た……」と、根津は笑った。「どんな物が出た。」

    「いや」

    と云つた。

    と、案外冷静に云つた。

    「もう遅いんですよ、おぢいさん。泊つてつたらどうです」

    と、云つた。

    「いつたい、今日は何ごとかの」

    と、房一はもう一度感心した。

    「なんだつて、脳溢血?――そいつあ大変だねえ」

    「ほう。元気だね。ハッパでやられたかね」

    それは初めて口に出す言葉だつた。

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